2012年9月3日月曜日

規制緩和に反対し、交通の安全と労働者の権利を守ってきた建交労の闘い
建交労東京トラック部会事務局長 中島均

トラック運輸産業の実態
 トラック運輸産業は、国内の貨物輸送市場において約9割を占め、日本経済・国民生活にとってなくてはならない基幹的役割を担っています。  
しかし、90年の「物流二法」の施行によって、産業構造大きく変化しました。事業は、免許制から許可制へ、運賃体系も認可制から届出制と自由化され、新規参入の事業者にとっての参入条件が大きく緩和されました。
その結果、施行当時の90年で40,000社だった事業者数が09年には62,712社と急激に増加しました。産業の99.9%を占める事業者が中小・零細企業であり、事業者数の増加は運賃ダンピングをはじめとする過当競争を招き、廃業や倒産に追い込まれる事業者も少なくありません。 
さらに経営者は事業を存続していくためにそのしわ寄せを労働者に押し付け、現場では社会保険未加入や長時間労働、一方的な賃金引き下げなどの違法・脱法行為が相次ぎ、重大事故を多発させる大きな要因となっています。

中小企業運動の徹底、「共存・共闘」の追求
 トラック運輸産業に限らず、企業数の90%以上・労働者の7割が中小企業で働き、日本経済を支える大変重要な存在となっています。
しかし、その反面で経営・労働環境は劣悪な状況にあり、大企業・親会社・荷主などによる不公正取引の強要が常態化し、中小企業で働く労働者の雇用・生活を破壊しています。これらは、個別の企業や労働組合では解決できない重要な課題であり、解決が急務となっています。
建交労ではこのように日本経済の中心的役割を担う中小企業の経営者に対し、共同を呼びかける「共存・共闘」を方針にかかげています。
「共存・共闘」の基本は労使関係の確立であり、1975年に中小企業家同友会全国協議会から発表された「中小企業における労使関係の見解」などを生かし、職場において正常な労使関係の確立をすすめています。特に「共存・共闘」を呼びかける柱の中では個別の労使関係はもとより、さらに発展した集団的労使関係の確立を重点においています。

全産業水準の賃金をめざして
建交労全国トラック部会ではトラック運輸産業で働く労働者の悪化し続ける環境に歯止めをかけるため、17年ぶりにトラック政策を確立し、「めざそう全産業水準の賃金・労働条件を働く者と家族のために」をスローガンに運動をすすめています。
このトラック政策は、①大型トラック運転手年収700万円をめざす賃金政策、②労働時間政策、③全産業水準の賃金・労働条件をめざす基本的要求、④業界秩序確立・経営環境改善、社会的地位向上をめざす政策、⑤雇用政策⑥労働組合のたたかい(産業別統一闘争)で切りひらく、6つの柱で構成しています。

安全・安心な職場環境と「人間らしい生活を」
 トラック運輸産業は規制緩和以降、まともな経営・労働環境にはなく、利用者に安全・安心なサービスを提供できる状態にありません。さらに産業を取り巻く課題として燃料高騰、適正運賃収受、飲酒運転、交通・労災事故などの課題が山積しています。
また、少子高齢化がすすむ中、この産業の不安定要素として将来のドライバー不足が懸念されています。その理由として若者のクルマ離れや免許制度の改正があげられ、近年では不況による就職難が続く中でもこの産業への就職希望者は減少を続け、職場では高齢化がすすんでいます。
トラック政策を労働組合へ結集する仲間が一人ひとり実践し、さらに多くの未組織労働者がこの政策に賛同し、運動を広げることが環境改善の近道となります。
国内物流の基幹的な役割に見合った賃金・労働条件の獲得と安全・安心な職場環境の実現を、さらに産業で働く労働者が一日も早く「人間らしい生活」を取り戻せるように運動の推進が求められています。